洗練されたレストランが山の中に忽然と姿をあらわす
そのレストランは富山の山奥に忽然と姿を現しました。木造建築で周辺と調和したセンスのよい建物が山の中腹に建っており、周辺には木々以外なにもない。到着するとすぐにパリッとしたシャツを着た若い女性スタッフがお出迎えしてくれました。へとへとになりながらも山奥のレストランにたどり着き、そこで思いもよらない歓待を受ける。昔読んだ宮沢賢治の短編、「注文の多い料理店」の世界です。 若くとても感じの良いスタッフの案内で恐る恐る建物に入ると、そこは大きな窓から渓谷の木漏れ日がさす明るいウエイティングルームでした。ゆったりとした木製のソファーに座り、木の良い香りがするおしぼりとハーブティーのサービスを受け、ここまでの道のりの疲れが消えていく心地よさです。 いよいよ食事の時間となり、重々しいドアを開けて、食事フロアに案内されました。渓谷が一望できる広々としたオープンキッチンの空間が目の前にひろがり、数人の若いスタッフがおそろいの装いをしてイキイキと働いています。案内された個室はスッキリとしたモダンな空間で、無垢の木の分厚いテーブルと曲線の美しい木製椅子が温かみを感じさせてくれます。 料理はフレンチのフルコース。人なつっこい笑顔の素敵なスタッフから料理や飲み物の説明を受けた後、料理がはじまりました。


喧々諤々の帰路、ハプニングに遭遇
帰り道は山道を避けて富山方面へ下り、日本海側を通るルートを選びました。車内では今後の料理の方針について6人で喧々諤々の議論を繰り広げながら帰途に就きました。信州らしさとはなにか、私たちの料理文化とはどんなものなのか、海がない信州のハンデをどう克服するのか、新レストランの強みは何か。素材の味を引き出すシンプルさと、料理の広がりを持たせる複雑さとのバランスをどうとるのか。議論はつきませんでした。 富山から新潟へと順調に高速道路を進んでいたその時、突然我々の後ろからサイレンを鳴らした一台のパトカーが迫ってきました。一瞬、なにか事故でもあったのかと思いましたが、なんとパトカーの目標は私たちの乗っている車でした。この時、慎重かつ運転上手な若者がハンドルを握っていたのですが少しだけスピードオーバーしていたようです。道路の脇に車を止められ、反則切符を切られました。車内での白熱の議論があだとなり会話に夢中で気が付くのが遅かったようです。 反則切符を切られて6人とも意気消沈。その後は静かに鹿教湯温泉へ帰りました。 L’évo | レヴォ:富山の奥懐・利賀村から発信する前衛的地方料理の進化 (levo.toyama.jp) 新規レストラン開業に向けて、着々と準備が進んでいます。
斎藤ホテルから見た鹿教湯温泉